絵に描いた餅を食べる方法(6)
−ヒト、餅を分解しはじめる−
さて前回、人間は自然界の観察を再開し始め、知的にも実質的にも
大冒険時代が始まったわけだが、冒険される側としてはいい気分で
ないような気もする。
勝手にヒトの領土に足踏み込むわけだからな。
それに実質的な冒険の結果、知的冒険的な喪失もかなりあったことを
付記しておかねばならない。
たとえばマヤ文明の20進法なんかだよな。
高度な数学がああも簡単に失われたのは勿体ねぇとしかいえないわ。
まー、そのような知的喪失もありつつも人間は知的冒険を続ける。
20世紀になっても空を、海を、宇宙を冒険し続ける。
それはさておき。
冒険者たちが世界を駆け巡っているころ、一般人の生活はじわじわと
変化をし始めていた。
たとえば冒険者たちが別の土地から持ち帰った食料が普及したり。
イタリア料理が彩り豊かになったのはそのせいであるといってもいい。
トマトやらピーマンやらでやたら食欲のわく代物に。
トウガラシもそうだよな。
アメリカ大陸からコロンブスが持ち帰りヨーロッパ、アジアにも広まった。
わずか数十年で日本とかにまで到着する。どんだけだよ。
豊かになったのは食生活だけではない。
それまで手工業的だった産業が集団的手工業になり、都市化が加速。
いろいろなものの大量生産が可能となる。食料自体も増産されている。
その結果か、より詳しく世界を観察する余裕が知的冒険者たちにも出てきた。
すでにダ・ヴィンチやらが自然物、生物などの運動について観測を行いまくって
おり、その観測結果を元にさまざまな数式が算出される。
細かく、より細かく見る。
そうすることでより正解に近い値を出すことができ、その値を数式に
突っ込めば、動きを予測できる!
見える!見えるぞ!私にも動きが見える!!
占星術師としてはダメダメだったケプラーだが(やる気もなかったんじゃね?)
物理学者としては優れた才能を発揮しまくり、天体の軌道やら面心立方格子
やらの予想を立てている。
それをなんに使いたかったのだろうな…占い?
生物学に関してもレーウェンフックやフックらが、微生物や細胞を顕微鏡で
じろじろ観察し、少なくとも古典的自然発生は否定されてしまった。
雑然としたところから何かが生まれるのではない。
(微小な秩序が原因であるかもしれない…がそれはまた別の機会に)
関係ないがレーウェンフックの顕微鏡は使いたくないなぁ。
超高性能のルーペみたいなもんだが、使いにくそう。
素人向けじゃないのは確かである。
自然は雑然としたものではなく、複数の数式が組み合わさったものである、
という考えが生まれようとしていた。
神学、論理学、数学などを学んだデカルトは力学を基にした機械的宇宙論や、
コギト・エルゴ・スム(我思う故に我あり)などの思想にたどり着く。
その理論には間違っている点もあるが、その思想は現在の科学にも通じる
ものは少なからずあると思う。
そして、巨人たちの肩に乗ったニュートンが
「原因なんざ知らないよ!とにかくそうなるんだよ!」
と、万有引力の法則を唱えたりする。
実のところ現在でも十分に原因は特定できていない。
…ある意味こいつのせいじゃね?もうちょっと調べとけよ。
この世は細かいなんかで動いてるんじゃね?
この思想が古典力学から熱力学、そして量子力学、分子生物学にまで
影響を及ぼすことになる。
(そして原因なんざしらないよ!とにかくそうなるんだよ!という思想まで
後世に影響を及ぼすのは悲しいことである。)
ただ、どこまでもどこまでも分解していくと…ちょーっと困ったことになる。
情報と物質の関係…実は…いや、まだいいか。
…あぁ、ヘッケルとかゲーデとかに触れるのは次回になってしまった。
その次あたりかなぁ、メンデルは…
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